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びんリユース推進全国協議会 第8回総会 開催

開催日時 2018年5月29日(火)16:00〜17:00
開催場所 日本ガラス工業センター会議室 (東京都新宿区百人町3-21-16)

第8回総会 会場
第8回総会 会場

びんリユース推進全国協議会は、5月29日(火)に第8回総会を開催しました。
安井代表を議長に選任し、「2017年度活動報告(案)」「2017年度収支報告(案)」「2018年度活動計画(案)」「2018年度予算(案)」についての審議が行われ、承認されました。




○開会ご挨拶

安井 至 代表

安井 至 代表
(東京大学 名誉教授、一般財団法人持続性推進機構 理事長)

「本日は総会にご出席いただきまして誠にありがとうございます。

“環境”が一番ブームだったのはいつかというと、おそらく環境の大学や学科などがたくさんできた頃ですから、1990年代の後半ではないでしょうか。それからずっと沈静化していましたが、ここのところはかなり動きが出てきていると思います。特に日本の状況ですと、やはり自動車産業が先頭をきっていることは明らかで、その後を眺めておりますと、どうやら後に続くのは化学メーカーだと思われます。この2業種がリードしていて、他のところはまだあまり動き始めていないように思っております。しかしながら海外の動きを見ますと、たとえばプラスチック容器の未来、中国のごみ輸入禁止問題も影響しているのかもしれませんが、特にマイクロプラスティック云々ということでは、フランス辺りがかなりセンシティブな状況にあるようです。

そんな状況でございますが、それではびんリユースというのはいつ頃本当に役に立つのか。おそらく本格的に動けるのはあまり早くはないのではないかと思っております。やはり徐々に世の中が変わっていって、輸送の負荷が電気自動車によってかなり軽減されたときになるのではないでしょうか。世の中が変わると、ガラスがほとんど作れなくなるという事態になるかもしれないし、たぶんプラスチックの容器も難しいですから、メタルと、ガラスのリユースびんに再び戻るのかもしれませんね。皆さんにはそれがいつ頃起きるのかというのを読んでいただき、そういう時期になったときに社会は容器に対して一体どのような要求をしてくるのか、考えていかなければなりません。

ただ先程も申し上げましたように、そうすぐには起きないでしょうから、その時期までこの業界がどうやって生き残るかが最大の問題でございまして、それに関して色々と議論をいただくのが一番いいのではないかと思っている次第でございます。本日の総会をよろしくお願い申し上げます」


○2017年度活動報告

協議会設立から7期目となる2017年度は、第Tステップ第三期(2017〜2019年)の1年目にあたり、充分とはいえないまでも、地域に根差した積極的なびんリユースの活動に取り組むことができました。

報告された主な活動内容は下記の通りです。これまでに蓄積してきたびんリユースの取り組み内容を集約し、課題を具体化して関連事業者と共有することで、新たなる発展につなげていきたい考えです。


(1)びんリユースの推進を課題化し、その解決に向けた実施

  • びんリユースを推し進めるための課題について大枠は整理することができた。課題解決のためにはいくつかの問題があり、それを解決しながら突破していかなければならない。
  • びんリユース将来ビジョン(中長期ビジョン、ロードマップ)の策定については、チームを編成して検討を開始した。

(2)びんリユースのテーマ別要件整備の具体化

 下記の具体化テーマを中心に、関連団体と協議を重ね作業を進めた。

  • ラベルの改善、開発に取り組む(日本酒造組合中央会と共同)
    リユース可能な「ラベル仕様」の提案に向けて、ラベル剥離のモニターテストなどを実施した。
  • 洗びん機の改良・開発調査を行う(びんリユース推進全国協議会主導)
    洗びん機メーカーや洗びん事業者と共同で、省エネや洗浄技術の高度化など、洗いびんの品質向上に協力した。
  • リユースびんの規格統一化の検討を行う(全国びん商連合会、日本酒造組合中央会と共同)
    引き続き、中容量容器(900ml、720ml)の規格化を検討した。
  • リユースびん品質管理の維持に取り組む(びんリユース推進全国協議会主導)
    洗びん機メーカーや洗びん事業者と共同で、洗いびんの品質管理に協力した。
  • 効率的P箱配置と改善策の検討を行う(日本P箱レンタル協議会と共同)
    不明P箱防止など、P箱レンタルシステムの改善等について論議を重ねた。
  • リユースびんステークホルダー会議と連携する(日本酒造組合中央会と共同)
    日本酒造組合中央会主催のステークホルダー会議との連携を図った。また、協議会独自のステークホルダー会議の設置についても検討を行った。
  • 招布(まねぎ)の普及を図る(全国びん商連合会、大阪硝子壜問屋協同組合と共同)
    招布によるびんリユース普及促進に取り組んだ。

(3)びんリユース推進地域協議会への支援協力

  • 12月12日(火)愛知県名古屋市において、東海地域びんリユース推進協議会と共同で「第2回びんリユース地域協議会交流会」を開催した。東海地域びんリユース推進協議会の将来像の作成や、東海地域のステークホルダーとの連携強化などが今後の課題である。
  • 2月23日(金)大分県別府市において、九州硝子壜商業組合と共同で「九州圏びんリユースシンポジウム2018」を開催した。九州圏での今後の取り組みについては、夏までに内容を確定し活動を進めていく。また次回の開催候補地としては中四国、北海道が挙げられる。
  • 山梨ワインびんリユースの取り組みについては、関東甲信越びんリユース推進協議会への支援を行った。山梨県との打ち合わせを実施し、ワインびんステークホルダー会議を開催した。山梨県ではワインを農林水産省の地理的表示保護制度(GI)に登録しており、また2020年に酒税が改正されることから、これらとリンクさせてびんリユースの普及を進めていくことが考えられる。

(4)びんリユースの情報発信

  • 若年層へのびんリユースの啓発を図ることをテーマに、12月27〜28日、ecocon2017(全国大学生環境活動コンテスト)に参画した。
  • 第4回運営委員会において、SDGs(「持続可能な生産消費形態を確保する」等)を学習した(講師:安井代表)。

(5)その他

  • 東京2020大会については、東京都酒造組合など地域の関係団体と共同で論議を進めていく。

◎ 協議会運営の充実と他の機関との連携について

  • 年6回の運営委員会を開催
    7月13日、9月20日、11月30日、2018年1月31日、3月27日、4月26日に運営委員会を開催し、会員の意見反映に重点を置いた運営を行った。
  • 日本酒造組合中央会および各県酒造組合との連携
    日本酒造組合中央会によるステークホルダー会議(2月16日、2月27日)、大分県酒造組合の後援による九州圏びんリユースシンポジウム2018(前述)を開催した。引き続き連携を継続していく。
  • 他の業界団体との連携
    社会福祉法人きょうされんの理事会に参加し、福祉法人との連携・交流を行った。こうした交流を強化し、地域での実践に結び付けていく。
  • 環境省および自治体との連携
    環境省および大分県の後援を得て九州圏びんリユースシンポジウム2018(前述)を開催した。

○2018年度活動計画

 第8期となる2018年度は、各活動計画でこれまで積み上げてきた成果をさらに具体化していきます。

 主な活動計画内容は以下の通りです。

(1)びんリユースの推進を課題化し、その解決に向けた取り組みの実施

  • びんリユースの現状・課題を具体化し、共有化し進化させる
  • びんリユースの将来ビジョン(中長期計画、ロードマップ)策定を検討する
  • SDGs(目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」)とびんリユースの推進・連携について継続的に検討する

(2)びんリユースのテーマ別要件整備の具体化

  • リユースびんラベルの改善・開発に継続して取り組む(日本酒造組合中央会と共同)
  • リユースびんの品質管理の維持に取り組み、洗びん機の改良・開発調査を行う(びんリユース推進全国協議会主導)
  • リユースびんの規格統一化の検討を継続して行う(全国びん商連合会、日本酒造組合中央会と共同)
  • 効率的P箱配置と改善策の検討を継続して行う(日本P箱レンタル協議会と共同)
  • リユースびんステークホルダー会議を模索する(日本酒造組合中央会と共同)

(3)びんリユース推進地域協議会への支援協力

  • 第3回びんリユース地域協議会交流会の開催を検討する
  • びんリユースシンポジウムの開催を検討する

(4)びんリユース将来ビジョンの検討

  • 若年層や消費者へのびんリユースの啓発を継続する
  • SDGsの継続的情報発信を模索する

(5)びんリユースの情報発信

  • 東京2020大会との連携を模索する

[活動報告に関する意見交換]

  • 吉川氏(全国びん商連合会 会長)
    厚生労働省が2020年にHACCP(ハサップ)を食品業界すべてに義務付けるという計画でいるようだ。びん商の業界として懸念されるのが、びんに対して求められる品質が厳しくなるのではないか、リユースびんを避けようという動きも出るのではないか、ということである。そのため厚生労働省へ伺って内容を聞いてみたところ、何かが起きたときに説明ができるような手法として広めようとしているのであって、品質基準などを高めようということではないという説明だった。

    今後、全国びん商連合会の主催で、厚生労働省の方を招いた説明会を開くことを予定している。また、洗いびんの基準や洗びんの手法などをまとめたものを作成して、厚生労働省のホームページで紹介してはどうかというご提案もいただいたので、そうした取り組みもしていきたいと考えている。

○来賓ご挨拶

 来賓の環境省 丸山氏よりご挨拶をいただきました。


丸山 祐太郎 氏
(環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室)

丸山氏

「本日は、びんリユース推進全国協議会第8回総会開催、また議案が滞りなく承認されたこと、おめでとうございます。

リユースについては、毎度お話しすることではございますが、平成28年5月の中央環境審議会、産業構造審議会の報告書(「容器包装リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書」)で、“リユースを促進していく”ということになっております。そして最近の話題ですと、海ごみの問題や、中国の廃棄物輸入禁止など、資源物・廃棄物を取り巻く環境というのは変わってきています。そうした中、びんリユースという仕組み、多様な方々の連携によって作られたスキームは非常にすぐれたものであり、一度崩れてしまうとなかなか再構築できないということで、大切にしていかなければならないと考えております。

びんリユース推進全国協議会さんにおかれましては、本日承認された活動計画にある通り、課題を共有し、その解決に向けた議論を進めていただければと思っております。また、活動計画の中にもSDGsに関して継続的に審議をしていくことが入っておりましたので、環境負荷の面におけるびんリユースの優位性というところを踏まえて、さらにSDGsも考慮しながら、より議論を深めていっていただければと思います。

話は変わりますが、昨年度、環境省としてはP箱の適正利用と返却に関するチラシをホームページに掲載するなどいたしました。今年度も引き続きびんリユース推進全国協議会さんと協力し、必要な支援をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

最後になりますが、びんリユースの更なる促進を祈念しまして、私からの挨拶とさせていただきます」


○閉会ご挨拶

田中 希幸 副代表 (ガラスびん3R促進協議会 事務局長)

「本日は皆様方のご協力をもちまして、円滑に議事が進行いたしまして、すべての議案に承認をいただき、誠にありがとうございます。

4月に環境基本計画が閣議決定されて、循環基本計画がいま最終段階になっているというのは、すでにご案内のことかと思います。釈迦に説法で大変恐縮ですが、環境基本計画の中で、環境側面のみならず経済的な側面なり社会的な側面といったものを統一的に取り組んで、同時解決をしていきたいということが述べられていたように理解をしております。また一方で、環境とは若干違うかもしれませんが、エシカル消費みたいなものも世界的にみるとだいぶ伸長してきている状況もあろうかと思います。このようなことは、ある意味、びんリユースにとっては非常に追い風になるのかなと思います。

もう一つ、基本計画の中で『地域循環共生圏』ということも謳われております。リユースびんがその地域の中できちんと円滑に機能していくということになると、まさしく地域資源を循環し、共生する一つの大きな取り組みになりますし、地域経済循環のような観点からいっても、理に適っているシステムではないかなと思います。

とは言いながらなかなか厳しい現実がある中で、私たちの活動がそれぞれの地域の取り組みを少しでもお助けさせていただくような形になって、びんリユースが実現できるような機会が増えていくことを祈念したいと思います。本日はどうもありがとうございました」


○代表・副代表コメント

 安井代表、吉川副代表、田中副代表より、総会を終えてのコメントが届いています。

安井代表

安井 至 代表
(東京大学 名誉教授、一般財団法人持続性推進機構 理事長)

「びんリユースがいま滅びてしまうと、たぶん後で大変困るなという発想で、私は取り組んでおります。

パリ協定というのは本当に大変な話で、たとえばガラスも今までのようには作れなくなるかもしれない。そうしたらなるべく作らないで再利用しないといけなくなる。プラスチックも、フランスあたりは海の環境等を考えてかなり先進的な取り組みをやりそうな感じがいたします。日本がそれをできるかどうかは分からないですけれども。

今世紀の2050年までというのは、おそらく大変革が起きて、何が起こっても不思議ではないと思っていますので、それに対して、やはり(滅びてしまったものを)よみがえらせるのは大変ですけれども、維持することを何とかやりたいなという、その中の一つがリユースかなと思っています。

回顧主義者というわけではないのですが、たとえばトロリーバスというのをご存じでしょうか。電気で動くバスで、架線が道路の上に張ってあって、私が高校生のときにはそれで通学していました。未だに旧ソ連圏には走っていますけども。それがいま、ドイツあたりでは新しく道路に電線を張ろうかという時代になってきている。要するに、古い技術をとにかく大切にするという時代に入ったみたいですね。ですからその一つとして、びんリユースも何とかしたいなと、そう感じています」

吉川副代表

吉川 康彦 副代表
(全国びん商連合会 会長)

「協議会の設立から8年目になりますが、色々なネットワークが繋がって、メンバーも増えてきました。それが一番、リユースびんにとって大事なことだと思います。リユースというのは出しっぱなしではないので、色々な方々の関係があって循環していて、それぞれのセクターが協力することが必要ですので。協議会は省庁との窓口にもなっていますし、そういう関係で、段々と意義が深まってきたという気がしています」

田中副代表

田中 希幸 副代表
(ガラスびん3R促進協議会 事務局長)

「びんリユースシステムは、ある程度の要件がきちんと整うと、環境に対して非常に有効なシステムだということがいわれています。一方で、リユースびん自体がその地域のひとつの財産として、地域の中で資源循環ならびに経済循環に寄与していけたらと思います」