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びんリユース地域交流会 in 大阪

これからのびんリユースの可能性とあり方を探る

みんなで考える、びんリユースでつくるサステナブルな未来の可能性

びんリユースに関わる消費者、事業者、学識者、行政など、関係の皆さんにご参集いただき、びんリユースが果たす社会的な価値と役割など、将来に向けたびんリユースの可能性と在り方についての議論が行われました。

会場

開催日時 2024年2月22日(木) 13:15(13:00 開場)〜17:00
場  所 エル・おおさか南館7階 734研修室
主  催 びんリユース推進全国協議会
大阪びんリユース推進協議会

プログラム

開会・主催挨拶
吉川 康彦(びんリユース推進全国協議会 副代表、全国びん商連合会 副会長)

来賓挨拶
粟田 哲夫 氏(大阪国税局 課税第2部 筆頭酒類業調整官)

一部 基調講演
「将来に向けたびんリユースの在り方」仮題
松井 康弘 氏(岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域准教授)

二部 事例紹介
<テーマ>びんリユースでつくる未来の可能性
1. 「クラフトビール(手作り)ビールの夢」仮題
渋谷 香名 氏(大阪渋谷麦酒)
2. MOAIプロジェクト〜日本酒「奏」のリユースびんの取組み〜
中川 典也 氏(株式会社土と野菜)
3. 豊中市におけるリユースびん入り大和茶「と、わ(ToWA)」の活用状況について
廣田 学 氏(特定非営利活動法人とよなか市民環境会議アジェンダ21 事務局長)

三部 ステークホルダーミーティング
ファシリテーター
  • 岡見 厚志(Rびんプロジェクト代表)
  • 西村 優子(大阪びんリユース推進協議会代表)
  • 参加された皆さん
  • 中川 道弘 氏(宝ホールディングス株式会社)
  • 山崎 和彦 氏(富士ボトリング株式会社)
  • 植田 光夫 氏(日本山村硝子株式会社)
  • 辻 良太 氏(日本山村硝子株式会社)
  • 馬場 浩一 氏(コープ自然派事業連合)
  • 成尾 秀夫 氏(大阪硝子壜問屋協同組合、株式会社成尾屋)
  • 田中 修一 氏(日本P箱レンタル協議会)
  • 高橋 雅子 氏(グリーンコープ共同体)
  • 渋谷 香名 氏(大阪渋谷麦酒)
  • 中川 典也 氏(株式会社土と野菜)
  • 廣田 学 氏(特定非営利活動法人とよなか市民環境会議アジェンダ21)
  • 松井 康弘 氏(岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 准教授)

  • ステークホルダーミーティング総括
    松井 康弘 氏(岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 准教授)

    閉会挨拶
    田中 希幸(びんリユース推進全国協議会 副代表、ガラスびん3R促進協議会 理事・事務局長)


    開会・主催挨拶

    吉川 康彦(びんリユース推進全国協議会 副代表)

    吉川氏


    • 当協議会は、平成23年〜28年環境省が「我が国おけるびんリユースシステムのあり方検討会」の委員を中心に設立した協議会。メンバーはびんリユースに関わる事業者、団体、NPO、オブザーバーとして環境省、経済産業省、農林水産省、国税庁が参加。
    • 年1度にシンポジウムを開催。今まで仙台、福島、名古屋、大分、東京、京都で開催。
    • ガラスびんには2つの優位性がある。
      一つ目は、吸着しない容器である。ペットボトルなどの容器は分子構造の隙間に臭いが残るが、ガラスびんは密度が濃いため、洗い流すことができる。そのため、洗うことで容器を何度でも使用できる。そのことによりCO2排出を抑制、温暖化防止にも貢献できる環境優位性。
      二つ目は、ガラスびんのリユースでは税金を使用していない。家庭から出る容器は市町村が回収するため税金が投入されている。


    来賓挨拶

    粟田 哲夫 氏(大阪国税局 課税第2部 筆頭酒類業調整官)

    粟田氏


    • 国税局は税の課税・徴収のほかに酒類行政も行っている。財務省設置法第22条で酒類業の健全な発達が規定されている。主には、日本産酒類の酒造り文化の伝達および日本産酒類商品の国内外へのPR。海外では、輸出促進のための見本市でのプロモーション、専門家向けセミナー、輸出促進のための補助金の公募、訪日外国人向けの探訪ツアーなど多岐に活動。
    • 社会的要請の活動では、警察などと飲酒運転防止とタイアップし、20歳未満の飲酒禁止キャンペーンなどを実施。また、容リ法に基づく活動として、リユース、リサイクル促進の活動を行っている。

    一部 基調講演

    「将来に向けたびんリユースの在り方」

    松井 康弘 氏(岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 准教授)

    松井氏


    • 工学部循環型社会システム学分野を研究。テーマは「持続可能な社会の実現を目指す」。世界共通の3Rの優先順位(リデュース→リユース→ リサイクル)に沿った、個人の行動を変える、社会システムの変革が不可欠。
    • 研究対象は、当初「リサイクル・行政・市民」が中心だったが、リデュース、リユースの推進は、市民、行政のみでは不可能で、生産・流通関連企業などが不可欠である。近年SDGsなどを企業が事業活動で行うようになり、現在の研究対象は「2R・事業者との連携」に変更。科学的データに基づいて行政の意思決定の支援、地域での3Rの社会実験的な取り組みを通じて成功事例を作成し、他の地域にも展開する。
    • 事業系食品ロスの研究では、岡山食品ロス削減プロジェクト「のこり福キャンペーンPart2」をデパート1社、生協2団体、スーパー2社、AI自動発注システム会社の協力で実施。デパート、スーパーの食品ロスは、期限が近いなどの割引商品の在庫であるため、割引商品の販売促進を行う取り組みである。
      店舗内にライブカメラを設置、スマホアプリで割引食品の中継画像を配信。アプリの使用によるポイント還元とあわせてフードバンク岡山に10円が寄付される。
      食品ロスの削減は、手前取り、割引食品の購入喚起が重要であるため、目立つように店舗内フロアに置くPOPなどを作成。
      アプリ登録者数は212名、ページビューは1,300〜1,500回/日。食品ロス効果としては、通常と比べ割引商品の在庫が3〜5割削減した。
    • リユースびんの研究では、2013(平成25)〜2014(平成26)年度に環境省の補助事業でリユースびん実証事業を行った。リユースびん飲料の商品が少ないため、岡山県の象徴的な商品開発を検討し、平成25年に岡山県産茶葉を使用したほうじ茶飲料(現在販売休止)。平成26年に岡山県産清水白桃果汁炭酸飲料(現在販売中)を開発。容器はリユースびん「Rドロップス(第2号)」(容量220〜230ml)を使用。ほうじ茶飲料はびんに商品名などを直接印刷したが、びんに印刷があると他の商品に使用できないため、果汁炭酸飲料は紙ラベルに変更。
      今回のカーボンフットプリント(CFP)は容器・付属品のリユースびん・王冠・ラベルについて算定。リユースびんのみではリユースびん製造段階が最も高い割合で、次に廃棄・リサイクル段階となる。リユースびんを5回使用した場合、1回使用あたりCO2排出量は、リユースびんを仮に1回の使用で捨てた場合と比べ69%削減となった。付属品の環境負荷は、1回あたり王冠6.5g(全体の1.5%)、紙ラベル0.78g(同0.18%)であった。紙ラベルの添付はびんに直接印刷するよりも環境負荷が小さい。
      リユースびんの環境負荷を見える化するために、CFPの数値をラベルに表示。びんの回収率を上げるため、デポジット(預かり金)を50円に設定。設定金額は岡山県庁職員にヒアリングを行い、決定。
      岡山県庁職員のヒアリングでは、リユースびん飲料の用途・販売方法も確認。用途では「その場で飲む」「イベント」など返却の負担が少ないものが多かった。
      果汁炭酸飲料は、2019(令和元)年の岡山市で行われたG20保健大臣会合で提供。
    • 2014(平成26)年びんリユース飲料調達について岡山県・岡山市にヒアリングを行った結果として
      ・リユースびん飲料はグリーン購入の特定調達品目として指定されていない。
      ・会議で使う場合はびんの預かり金の会計処理が難しい。
      ・国の基本方針でリユースびん利用が「判断の基準」に格上げになると、岡山市でも格上げの検討となる。
      ・1種類では公平性の面から問題になる。
      とあった。現在、国の基本方針では、「ワンウェイのプラスチック製の製品及び容器包装を使用しないこと。」「繰り返し利用可能な容器等を使用すること又は容器包装の返却・回収が行われること。」とあるため、リユースびんが使用される条件はあるが、いまだに使用されていないのが現状である。
    • 今後の検討課題として行政機関の調達では、一つはグリーン購入の指針に特定調達品目として反映されることが重要。もう一つはリユースびん飲料の利用目標値の設定・調達比率のモニタリングなどの実施。また、リユースびんの課題として、飲食店での利用、宅配、栓抜きのいらないふたの開発などがある。
    • ルシステムとともに、宅配事業におけるリユースびん返却実態とその関連要因の実証実験を行った。パルシステムのリユースびん商品のラインナップは多く、リユースびん返却率向上が課題である。
      実証実験は、会員に広告の効果測定をするDAGMARモデルをもとに、リユースびんに関する認知・態度・返却実態に関するヒアリング・アンケート調査を実施。 調査では、返却率が低いと思われる区分は30代、3人家族、入会1年未満となった。アンケートでの主な自由意見では、「ふたが取りにくく、ケガをした」「Rマークが小さい、透明で目立たない」「複数の生協を利用しているため返却先が不明」などがあった。
      リユースびんの回収率向上のための方策を会員4名でディスカッションを行い、意見の一つとして、「ネット注文時にリユースびんであることを知らせる」とあった。
    • パルシステムとともに、リユースびん返却に対するポイント付与施策とその効果を測定するため3か月間、返却1本当り1ポイントを付与する「Rポイントインセンティブ施策」を実施。月次の販売本数と回収本数で効果の分析を行った。
    • パルシステムの広報をもとに、リユースびんに関する広報の効果予測を実施。パルシステムでは、「リユースびんのフローを記載したチラシ(パルシステムのチラシ)」「リユースびんを用いた商品ガイド(リユースびんガイド)」の2種を啓発ツールとして利用。ベイジアンネットワーク手法による分析を行い、「パルシステムのチラシ」「リユースびんガイド」それぞれ認知率を100%とした場合、「パルシステムのチラシ」では約5%、「リユースびんガイド」では約10%返却行動の参加率が向上すると推定された。
    • 今後のびんリユースのあり方として、1.カーボンニュートラル、2.グリーン・トランスフォーメーション(GX)政策上の位置づけの確立・強化、3.リユースびんの規格統一・円滑な流通基盤の整備、4.リユースびんの利用拡大・回収の仕組み、5.啓発・広報 に取り組む必要がある。

    <質疑応答、感想>

    田中 氏(びんリユース推進全国協議会 副代表)

    • 中央省庁の会合でペットボトル飲料が置かれているのを見ることが多いが、そのことを省庁職員に聴いたところでは、予算の関係で環境側面の調達より予算厳守に比重をかけざるを得ないような話であった。
      中央省庁が示しとなるようグリーン購入でリユースびん飲料を調達し、地方自治体がそれに基づいて広がって行くことが望ましい。

    松井 氏(上記意見に対して)

    • まずは環境省でリユースびん飲料の調達を徹底してもらうことが望ましいことである。グリーン購入ネットワークで地方公共団体のグリーン購入についてのランキングを作成しているがその中でリユースびんを取り上げてもらう方法も考えられる。

    二部 事例紹介

    1.「おかんが一念発起!私がクラフトビールを醸造するまで」

    渋谷 香名 氏(大阪渋谷麦酒 代表)

    渋谷氏

    • 主婦の時にクラフトビール醸造を思いつき、2022年3月に発泡酒醸造免許を取得、同年5月より販売を開始。大阪府藤井寺市で、現在も一人で醸造・配達を行っている。取引店舗は5店舗以上。
    • 商品は「河内乃えーる」ブランドを主として、コラボ商品も醸造・販売。
    • 醸造家になったきっかけは、老舗布団屋の9代目と結婚したが、先祖の4代目に日本初の国産ビール会社「渋谷ビール」を創った人物がいたことを知り、その復活を思い描くこととなる。
    • 経営理念は、「私が造るビールで、皆さんに喜んで頂けます様に・・・」である。その思いはSDGsにも絡んでくるため、人にも地球にもやさしい会社でありたいと考え、できることから取り組むようになった。
    • 取り組み1:大阪府南河内郡太子町特産の「太子みかん」の間引いた「摘果みかん」をビールのアクセントとして香り付けに使用。
    • 取り組み2:ビールの醸造は毎回120Lで行っているが、その都度25kg〜30kgの麦芽カスが出る。もったいないということもあり、行政に相談したところ、大阪府立農芸高校で世話をしている牛の飼料として活用することを提案され、学校でも快く受け入れてもらえた。
    • 取り組み3:びんのリユースを検討し、Webで洗びん業を探して、株式会社成尾屋を見つけた。ワンウェイびんを使用しているため、リユースできるかを問い合わせたが問題ないため、取引することになる。
      びんの回収は、藤井寺市役所でペットボトル回収を行っており、大阪渋谷麦酒は市役所近くなので、ペットボトルを持って行く時に、びんを持ってきてくれる。
    • 取り組み4:障害者福祉施設「たんぽぽの丘」にラベル原案制作を依頼。入所者に「貼り絵」で提案いただき、それをもとにラベルを製作。
    • 今後の展望は、現在の醸造所は実家の離れを利用し手狭なため、羽曳野市を候補地として検討中。食肉産業で歴史のある羽曳野市から食い処大阪の魅力の発信や製造残渣を利用した、人にも地球にも優しい企業を目指す。

    2.「MOAIプロジェクト〜日本酒「奏」のリユースびんの取組み〜」

    中川 典也 氏(株式会社土と野菜)

    渋谷氏

    • 廃棄物、未利用資材に新たな価値を見出すため2021年会社設立。本社は沖縄県。京都市が主な活動拠点。
    • 地域のコミュニティ形成、資源循環のための新技術などで地域の課題解決を目的にしている。
    • 活動のひとつとして、麻袋は廃棄で捨てられることが多いため、大学生、農家と協力して、防草シートとしての活用実験を行った。その実験を反映し、東京の渋谷で麻袋での屋上緑化の実証実験を行っている。
      また、2023年に東急電鉄などと協力して、地域コミュニティ形成のため「KOMAZAWA MOAI FARM」を実施。半年間利用できる600坪の土地を利用して、地域で出た廃棄物から、メタンガスを生成しエネルギーに、液肥は野菜や花に利用。資源循環を考える場として活用した。
    • 日本酒での活動は、日本酒を提供する飲食店が増加している兆しがあり、若者・女性が日本酒に関わることが多くなっていると感じている。また、海外では日本酒が人気になってきており、国内外で展開できる方法で、日本酒を盛り上げることを検討。
      日本酒に特徴を持たせることを考え「奏〜kanade〜」プロジェクト(以下、kanade)を開始。日本酒は地域性が強いので、日本酒が作られる地域の肴(アテ)との組み合わせを考え、SNSなどで認知を広げる。
      容器のリユースびんは、kanade開始当時、洗びん業を営む吉川商店代表 吉川氏(びんリユース推進全国協議会 副代表)に会う機会があり、日本酒にリユースびんが多く利用されることを知り採用。
      ラベルは、Tシャツ製造時の残布を利用。天然繊維は土に循環することもあり、天然繊維に特化した循環型を進める団体で大手アパレル企業も加盟している、(一社)天然繊維循環国際協会(NICO)の協力もあり、布製ラベルを採用。
      容器・ラベルを統一、中の日本酒は全国の酒造メーカーの協力を得て詰めている。ラベルには、詰められている日本酒や酒蔵のある地域の肴(アテ)、リユースびんの情報をQRコードで紹介。容量を300mlに決めたのは、一人で飲み切れる、販売店からの持ち帰るのが楽であることも考慮した。

      kanade のPRとして、石川県能登の酒造メーカー松波酒造などの協力でアースデイ東京に参加、京都の酒造メーカー増田徳兵衛、北川本家の協力でフランス料理のイベントを行った。
      京都では乾杯条例を行っており、前市長と会談する機会がありkanadeなどを伝えた。それにより京都市の後援、全国びん商連合会協力のもと、リユースびん循環協力店のステッカーを製作。酒販店などの協力店には貼付。
      東京の飲食店、酒販店でもkanade商品の展開が増加。
      Kanadeは、昨年2023年に同志社大学政策学部小谷ゼミとともに、京都でのイベント「循環フェス」や日本酒カクテル考案、SNSでのPRなどを行った。若い人がリユースびん、日本酒を知ってもらうきっかけになった。
    • MOAIアプリ、ポイントを開発。リユースびんの返却を促す方法として考案。環境省が推進する「グリーン・ライフ・ポイント」推進事業に採択される。ポイントはリユースびんの返却、ボランティア活動などで付与。たまったポイントはアパレル業界から提供されるシーズン在庫の新品の服と交換。今後はさらに地域に貢献できる仕組みづくりを検討。
    • 今後、リユースびんは認知度が低いが、説明すると環境に良いことを理解してもらえる。そのため飲食店、ホテルなどの限られた範囲内で循環する方法や、酒類業界以外の鉄道、農業、建築業界とも連携して、運搬、びんの最終処理などにも取り組む活動を提案。また、有機の日本酒が海外では評判がよく、有機が日本酒の付加価値となっているのでリユースびんも絡めた仕組みづくりも検討。

    3.「豊中市におけるリユースびん入り大和茶「と、わ(ToWA)」の活用状況について

    廣田 学 氏(特定非営利活動法人とよなか市民環境会議アジェンダ21 事務局長)

    廣田氏

    • 豊中では、1992年地球サミットで採択された「アジェンダ21」の豊中市版の作成を目的にとよなか市民環境会議(市長が会長、豊中市が事務局)を設立。市民の行動計画「豊中アジェンダ21」と、豊中市環境基本計画(市の計画)の二本立てが特徴。
      NPO法人とよなか市民環境会議アジェンダ21(以下、とよなかアジェンダ21)は、とよなか市民環境会議から自立した市民グループで、全国の中でも早期にできた組織である。
    • とよなかアジェンダ21の概要は、会員数個人135人・団体29団体、職員6人のNPO法人。
      基本的に参加する市民が主体となり運営・活動するテーマ別の部会があり、部会以外の法人全体で行う全体事業もある。全体事業の一つに豊中市立環境交流センターの指定管理者としての運営がある。
    • 環境交流センターで、大阪府の公共施設で初のリユースびん飲料(3種類)の販売を行っている。リユースびん飲料は施設受付で購入、びんを回収。施設内で飲む利用者が多い。
      販売のきっかけは、2012年度に指定管理者に指定され運営準備の時に、自動販売機が設置されていなかったため。当時のとよなかアジェンダ21の職員が、リユースびん飲料の販売を希望。大和茶「と、わ(ToWA)」の購入をWorld Seedに相談し、豊中市内の販売店に確認。大和茶「と、わ(ToWA)」以外の2種類のリユースびん飲料の購入も決定。リユースびん飲料の販売は、持ち帰りの場合のみ商品代金に追加してデポジット代10円/本を徴収し、リユースびん回収時に返却。
    • 環境交流センターでポイントカードを発行、利用者にはリユースびん飲料購入など環境に配慮した行動で、ポイントを付与。ポイントと交換できる景品にもリユースびん飲料を設定。ポイントを関連させることで、リユースびんの認知の向上を図っている。
    • 豊中市の審議会や意見交換会などの会議で、大和茶「と、わ(ToWA)」を提供することがある。市が「と、わ(ToWA)」を購入するきっかけは、2014年度に環境交流センターの市の担当(環境部)職員が、本庁の環境部関連¬の会議で利用することを部内に提案し、翌年度に環境部が他部署にも会議での利用を促した。購入の方法は、市の各部署から環境交流センターに発注、発注部署の職員が商品受け取り・びんの返却、請求書(未開栓は含まない)による支払い。環境の視点がないと、続けるのは困難である。
    • コロナ禍があり、環境交流センターの利用者の減少、市の会議はオンラインへの切り替えもあり、販売数は減少しているが、リユースびんは特徴的な取り組みとして今後も継続し、さらなるPRも行っていく。

    三部 ステークホルダーミーティング

    会場

    ファシリテーター

    岡見 厚志(Rびんプロジェクト)

    西村 優子(大阪びんリユース推進協議会)


    趣旨

    冒頭、西村氏よりこれまで、リユースびんの普及・推進活動を25年行い、成果があったもののリユースびんの使用量は残念ながら減少している。今日はリユースびん普及のため、参加者の情報・課題を共有することを目的に開催しているので、それぞれの立場よりお話いただき議論を深めたいと考えている。

    参加された皆さんの発言内容

    中川 道弘 氏(宝ホールディングス株式会社)

    • グループ企業の宝酒造は清酒、焼酎、味醂などを製造しているため、全国でも有数の1.8Lびん使用メーカーである。2022年度300万本以上使用。そのうち茶色の1.8Lびんは約90%がリユースびんである。
    • 贈答用商品などの外観のキズを気にする商品では、リユースびんの使用を控える等、商品によって使い分けている。また、口のカケやひびは品質問題になるため、びん口、中側を洗びん業者での検査の他に宝酒造でも念入りに検査している。
    • 家庭での1.8Lびん使用が減少しており、今後、容器の選択を多岐に考える可能性がでてきている。当社では独自の720mlリユースびんを製作・使用しているが、数量が安定しないと回収業者や洗びん業者の連携がとりにくく、単独のメーカーがリユースに取組むことの難しさを感じている。

    山崎 和彦 氏(富士ボトリング株式会社)


    • 大正10年からリユースびん飲料のみの製造(OEMも含め)を行っている。
    • 最近の環境、リユースびんの会合でよく発言することがあり、「リサイクルではダメで、リユースだけが使い捨てではない。」と「以前、ある飲料メーカーでペットボトルはお客さまが求める容器だから使い続けるとあったが、最近は傾向が変わっている。
    • 「リユースびんは回収のプラットフォームが重要」。
    • リユースびんミネラルウォーターを外資系ホテルチェーンに売り込み、SDGsの取り組みのこともあり、発注数が伸び続けている。納品はP箱で行っており、最古のP箱は1972年のものがあるくらい長く使用できるため、ダンボールを使用する必要がない。

    植田 光夫 氏(日本山村硝子株式会社)


    • さまざまなガラスびんの製造技術に関わり、現在も会社では技術を開発しているが、日本でのガラスびんの使用が減少する中、環境に最良なガラスびんが受け入れられていくのか心配である。日本のガラスびんの製造技術は世界一である。
    • 取引先にペットボトルを製造する会社があるので、ここでもガラスびんの良さをアピールしたいと考えている。
    • 牛乳は、ガラスびん入り、紙パック入りで美味しく感じる世代が異なる実験結果を聞いたことがある。
    • 環境教育で関わったが、保護者はガラスびん良さを知っているが、割れる=ケガをするという認識がある。また、ガラスびんを知らない世代が多くなっていると感じている。
    • ガラスびんの良さを理解してもらうには、小中高校から行うのが必要であるとして、全国の小中高校に献本される書籍「未来の授業」に日本山村硝子として、ガラスびんのことを掲載した。
    • 4年前のリユースびんのシンポジウムで、海外では社会人になってからも環境教育があるが、日本は学生までなので社会人になっても環境教育が必要との意見があったことを憶えている。

    辻 良太 氏(日本山村硝子株式会社)


    • 日本山村硝子は国内流通量の40%程度製造。業界団体の日本ガラスびん協会SDGs推進ワーキングの担当ということもあり、今回参加。SDGs推進ワーキングは、結成初年度にガラスびんのSDGsへの貢献をまとめ、のちの3年は、大学生を主としガラスびんのSDGsへの貢献を社会に広めるため活動している。主な活動として、東京家政大学では富士ボトリング社の協力により、リユースびん飲料を販売する実証実験、岡山大学では、松井准教授の授業でガラスびんの良さをPRした。
    • 東京家政大学の実証実験のアンケートではリユースびんの良さを、80%以上が認識していたが、リユースびん飲料を購入したのは約5%であった。リユースびんの使用のみでは、購買行動には繋がりにくいという結果であった。実験の商材は350mlであったため、重さ、容量なども課題であったと思う。

    馬場 浩一 氏(コープ自然派事業連合)


    • リユースびんの取り組みに3回チャレンジしており、課題が多く、実現に向けて進めている段階。
    • 今までリユースびんの導入が難しかったのは、20年くらい前から要望があるようだが、価格、割れ、使用するガラスびんの品質の問題もあり、導入できなかった。最近再度、リユースびん導入を進めているが、リユースびんメーカー、洗びん業者の課題がまだ残っている。

    成尾 秀夫 氏(大阪硝子壜問屋協同組合、株式会社成尾屋)


    • 洗びん業を営む。大阪硝子壜問屋協同組合の取り組みは、リユースびんマークを作成、酒造メーカーに依頼して1.8Lびん商品に貼付。1.8Lびんの回収の旗を作成し、回収協力店に掲げている。
    • ガラスびんは100%天然素材であることが利点であり、リユースびんの品質を保つため、洗びん技術・検査に時間、労力を使っている。

    田中 修一 氏(日本P箱レンタル協議会)


    • P箱は1.8Lびんを輸送するための容器(販売、回収に使用)。日本P箱レンタル協議会は1995年に設立。
    • 1.8LびんにあわせてP箱の使用数量が減少している。
    • P箱は洗って再使用しているが、洗浄機、ストックヤードは固定費のため、P箱の使用数量が減少することは利益が減ることであり、企業としては大変な課題である。また、経年劣化や破損したP箱は廃棄処理する為、新規にP箱を投入する必要があり、費用がかかる。
    • 1.8LびんのP箱は保証金を設定せず運用している(ビールのP箱は保証金が設定されている)。飲食店など、無断で使用されているものは抗議をしている。
    会場2

    高橋 雅子 氏(グリーンコープ共同体)


    • グリーンコープは九州発祥で福島、関西、中国、九州の16生協で組織。組合員の希望を商品化しているため、環境に良い事をするというのが理念。結成以来調味料やジャムなどはリユースびんを使用しており、牛乳はおいしさを追求したうえでリユースびんのみを使用している。リユースびんの返却がさまざまな理由で回収率100%になっていないため、現状でいかにリサイクル率を上げるかを運動課題としている。リユースびんがさらに使用される社会が早く来ることを願っている。
    • 最近、マイクロプラスチックが問題になっているため、ペットボトルを使用しなくて良かったという組合員の声を聞く。ただ、リユースびん飲料だと、フタが閉められない、持ち歩くには重い、割れるという声を聞くこともある。

    渋谷 香名 氏(大阪渋谷麦酒)


    • 当社から全国に販売することがあるが、大阪以外の地域では廃棄されることとなるため、クラフトビールはさまざまなメーカーが全国で製造・販売しているため、クラフトビール統一のリユースびんがあると良い。

    中川 典也 氏(株式会社土と野菜)


    • 「奏〜kanade〜」プロジェクトでは同じ300mlの容量であれば、色が異なっていても使用している。メリットとしては消費者が渡す相手などによって、色を選ぶ楽しみがある。デメリットは、色が異なるため、同じ日本酒の商品でラベルなどの表示が同じでも、日本酒が違うものと思われることがある。可能であれば300mlなどの小容量ガラスびんも規格統一されていると良い、そうすることでさまざまな酒造メーカーでの充填が可能になる。
    • 商品のストーリー性をいかに消費者に伝えるかが課題であり、消費者はリユースびんだから購入しているのではいため、商品全体のストーリーをまとめた中の一つとしてリユースびんが使用されているとしていきたい。

    廣田 学 氏(特定非営利活動法人とよなか市民環境会議アジェンダ21)


    • 運営する豊中市立環境交流センターでの子どもの購買は、めずらしいから買う。
    • 豊中市内の小学校が、重たい、危ないとの理由で、牛乳びんから紙パックに変更になったのが職員内で話題になったことがある。

    傍聴された皆さんの発言内容

    田中 氏(株式会社田中商店)


    • リユースびんの仕組みは大阪が最適と考える。大手、中小のメーカーが多い。南九州に900ml リユースびんがあるが九州、関西で900mlリユースびんを利用して、仕組みづくりを行い、全国に波及させて欲しい。

    月足 氏(株式会社長松商店)


    • びん業界で参考にすべき社会現象はレコードである。この現象はユーザーが質を求めたためである。ガラスびんも同様においしさなどの質から消費者にPRすることで使用量が増え、それにともない、付加価値として環境の負荷低減、日本酒、焼酎に限ると伝統飲料文化を守ることにもなる。

    戸部 氏(株式会社トベ商事)


    • 洗びん業を営んでいるが、コロナ禍後に、化粧品など食品以外のリユースについて問い合わせが増加している。化粧品用びんはコスト高、企業としてのSDGsの取り組みなど理由はさまざまではあるが、さまざまな形状のびんがあるため、洗びん方法がまだ確立されていない。あわせて、回収の問題も残っている。
    • ある酒造メーカーのラベルが洗びんで取りにくく、日本酒造組合中央会さんにもお願いしているが、国税庁さんからもお声掛けいただけないか。

    田中 氏(びんリユース推進全国協議会 副代表)


    • 1.8L壜再利用事業者協議会 会長も兼務しているが、その団体で「再使用に配慮した1.8L壜自主ガイドライン」を策定した。リユースし続けるために、1.8Lびんが共用のリターナブルびんとしてリユース可能な状態で出荷される必要があるとしている。

    山本 氏(びん再使用ネットワーク)


    • 10年前に東京の小学校3校で紙パックの牛乳をびん牛乳に変更して供給実験を行った。その時の1校で運搬中の小学生がびんを落として割った事例があった折、指導している学校の先生は、割れたことでガラスびんが割れることに気づき、ものを丁寧に扱うことを知る良い機会だったと仰っていた。
    • 2024年2月の世界の平均海水温が昨年の8月を超えたと聴いた。近い将来CO2排出量をゼロにしなければいけない時代が予想されるため、その時にガラスびんが見直される時がくると思っている。ガラスびんメーカーにはガラスびんの供給をしっかりお願いしたい。

    吉川 氏(びんリユース推進全国協議会 副代表)


    • 持続可能性は重要なことで、ガラスびんは洗うことができるなどRE100に最も近い容器である。洗びん工場で使用する電気、ガスのエネルギーを太陽光熱に変えることを検討中。
    会場3

    ステークホルダーミーティング総括

    松井 康弘 氏(岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 准教授)


    • ガラスびんの魅力をいかにPRするか。ガラスびんのおいしさを伝えることが重要で、飲むカップの素材をガラス、プラスチックの2つで官能試験などを行うことが考えられる。
    • 今回の意見の中で、環境分野でリユースびんが主役になれる部分となれない部分があると思う。主役になれる分野として、SDGsに積極的な外資系企業での販売促進による市場拡大が考えられる。参加者の中にも、リユースびんは脇役の位置付けで、ストーリー性を持たせるのが良いとの意見もあった。
    • 統一規格びんには課題があり、今は容量ごとにさまざまな規格のガラスびんが流通している。統一規格びんにすることで、製造における数量(ロット数など)の確保ができ、多くの企業で利用、リユースとしてまわすことができる。統一規格びんを作る上での課題は、酒造メーカーなど中身メーカーの製造ラインに合わせることができるかである。P箱も同じで、統一規格びんに合わせられるかである。
    • 今日参加されているリユースびんの最大のユーザーは宝酒造社かと思うが、使用方法など、他社にも展開できることがあれば知りたい。
    • 回収のプラットフォームは難しく、小売店の店頭でポイントを付与する方法、東京では自治体回収にびん商が関わっているため集めやすい。自治体が生きびんを回収している割合は人口比にすると思うより多くあり、回収率も計算できるのでプラットフォームとして自治体回収も検討可能。
    • 規格びんは720ml、クラフトビール用、調味料用などが検討材料となり、種類が多い生協でさまざまな容量および用途の規格びんを揃えて、それを他社・他業種などで展開できることが望ましい。
    • 再生可能エネルギーを使用するなど、業界での取り組みが、今後の検討課題である。

    閉会の挨拶

    田中 希幸(びんリユース推進全国協議会 副代表、ガラスびん3R促進協議会 理事・事務局長)

    田中氏

    • 容器としての基本的機能を満足させるためにプラスチックを使用していないのは、ガラスびんのみである。スチール・アルミ缶は内表面にポリエチレンコーティングをしている。紙パックは内外表面にポリエチレンコーティングされているが、あまり認知されていない。
    • リユースびんは、環境負荷が低い容器であると同時に、保存性・衛生性・安全性・意匠性が優れている。
    • 地球規模の環境問題(脱炭素、資源循環、ネイチャーポジティブ)は、容器ではガラスびんが解決する糸口を持っている。リユースびんは、75%が再生原料でつくられていることもアピールポイントである。ゼロ・ウェイストはリユースびんでしかできないこと。以前お会いした京都でリユースびんを利用して量り売りを行っている株式会社斗々屋社長の言葉で「容器には価値がある。価値があることをお客様に認識してもらいたい。そのためにリユース容器をする」が印象的であった。
    • 今後は、さらにガラスびんの価値や最新の情報を提供して、アピールする必要がある。