びんリユースフォーラム開催
日 時 | 2020年2月4日(火) 13:30〜17:20 |
場 所 | mumokuteki hall |
主 催 | びんリユース推進全国協議会 |
協 力 | 京都市ごみ減量推進会議、認定NPO法人環境市民、京都硝子壜問屋協同組合 |
2020年2月4日(火)、京都府京都市で「びんリユースフォーラム」を開催しました。
前半には、基調講演や話題提供、事例紹を実施。その内容をふまえて、後半は、びんリユースシステムが未来をどう作っていけるかなどについて、市民・行政・事業者による議論が行われました。
会場風景
開催内容
- (1) 開会挨拶
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びんリユース推進全国協議会 副代表(全国びん商連合会 会長) 吉川 康彦
- (2) 基調講演
- 人類と地球を悩ます2種類のごみ 〜その解決の方向性〜
びんリユース推進全国協議会 代表 安井 至 - (3) 講演
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プラ騒動を2Rの追い風に!
京都大学大学院地球環境学堂 准教授 浅利 美鈴
- (4) 事例発表
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1. 京都市のリユースびん回収の取り組みについて
京都市環境政策局 循環型社会推進部
まち美化推進課 業務推進・減量推進担当課長 宮本 博市
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2. 地域におけるびんリユースの展開〜リユースびん入り大和茶(To WA)の活動を通して〜
WorldSeed 副代表理事 中島 光 - (5) パネルディスカッション
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<テーマ>
びんリユースシステムが未来を創る
〜“環境>利便性”へのパラダイムシフト〜
○ファシリテーター
認定NPO法人環境市民 副代表理事 下村 委津子
○パネラー
- 京都大学大学院地球環境学堂 准教授 浅利 美鈴
- 京都市環境政策局 循環型社会推進部 まち美化推進課 業務推進・減量推進担当課長 宮本 博市
- 京都市ごみ減量推進会議 コーディネーター 堀 考弘
- WorldSeed 副代表理事 中島 光
- 全びん商連合会 会長 吉川 康彦
- 宝ホールディングス株式会社 環境広報部環境課 課長 中尾 雅幸
- 日本山村硝子株式会社 環境室 室長 辻 良太
- (6) 閉会挨拶・講評
- びんリユース推進全国協議会 代表 安井 至
- ○司会
びんリユース推進全国協議会 副代表(ガラスびん3R促進協議会 理事・事務局長) 田中 希幸
(1) 開会挨拶
吉川 康彦
(びんリユース推進全国協議会 副代表(全国びん商連合会 会長))
- 年に一度、地域的なリユースを推進する取り組みとして、福島、名古屋、大分などでフォーラムを開催してきた。今年は関西で京都が選ばれたが、関西は、灘・伏見が日本のお酒の4割以上を生産し、一升びんを中心にリユースびんが根づいた地域。
- 京都大学 浅利准教授、京都市 宮本課長、WorldSeed 中島氏が登壇。京都市は「しまつのこころ条例」として2Rを目指した町づくりをし、活きびん回収事業を15年ほど前からスーパーで一升びんやリユースびんを回収してきた。中島氏は、18歳くらいからリユースびんに魅せられ、自らリユースびん入りの商品をつくられた。
- 京都は、千年にわたり行政の中心で、文化の発信地。今日、地球温暖化、プラスチックごみの海洋汚染の問題がクローズアップされているが、リユースびんの推進を通じこれらの問題に対する解を探っていこうというのが本フォーラムの趣旨。
(2)基調講演
人類と地球を悩ます2種類のごみ 〜その解決の方向性〜
安井 至
(びんリユース推進全国協議会 代表)
- 2今世紀、プラスチックとCO2の2種類のごみ問題が非常に深刻。
- CO2の問題では、最近はポリエチレンが植物からつくられるが、地上の生態系にも影響するので、植物ならよいわけではない、という話になっている。地下にある石油もガスも、燃やせば気温が上昇し、再生可能エネルギーと言われる電気は不安定で、鉄鋼も還元剤が炭素なので、大量のCO2を出す。すべてを変えて、2050年は見たことのない社会をつくるしかなく、今可能性があるのは原子力しかないが、原子力再稼働も困難な状況。
- パリ協定や昨年9月23日の国連による気候変動合同サミットなどでは、2050年以降はCO2の排出をしないのが、先進国の共通理念。大気中のCO2の対策は、ダイレクト・エアー・キャプチャーといった技術でないと難しいが、サイエンスはその方向に進んでいる。
- TCFDという枠組みへの参加企業は、2019年5月経産省のプッシュによって、世界800社の内4分の1が日本企業である。CO2排出をゼロにするなどTCFDの要求は大変厳しいが、これに応えないと企業は融資を得られない時代になってきた。
- 地球温暖化の影響については、日本の台風19号などの被害も、海面温度の高さが要因。一旦、上昇した気温を下げるには1万年かかり、環境難民の受け入れなどの責任問題で、不正義をした国は、費用負担の義務が増えるという話になっている。
- 日本では、グレタさんへの反応も独特だ。パリ協定で使われる「気候正義」という言葉も理解されにくい。キリスト教の文化がある西洋と違って、日本国内での「正義」の正しい解釈は難しいのではないか。
- プラスチックの問題は人工素材であることで、自然消滅機能を持っていないので人為的に処理しないといけない。日本の経済は利便性、効率性、経済効果に支配され、一方、若者は現時点が楽しめればいいというマインド。とにかく、大きな課題ができてしまった。
- 環境省によるプラスチック資源循環戦略は、戦略性が足りない。バイオマスプラスチックの提案も、必要なサトウキビやトウモロコシが自国ではつくれないが、どこでつくるのか?また、生態系への影響をどうするのかが書かれていない。少し古いデータだが、日本はプラスチックごみ発生やレジ袋の消費も多い。
- 中国のプラスチックごみ輸入禁止問題もある。プラスチックはもう使えないぐらいの状況に追い込まれているのではないか。2019年国連UNEPの会議でのケニア、チュニジア、エチオピアなどによるレジ袋禁止の事例など、途上国のプラごみ対策は、先進国より遥かにシャープに進行している。
- 製品の廃棄までのコストを負う拡大生産者責任は、日本で認める企業がほとんどなく、もっぱら国や自治体の責任を主張する。実現は大変むずかしいが、日本の廃棄物問題を解決する本当の鍵が、拡大生産者責任にある。
- 温暖化やプラスチックなどの問題はサイエンスとテクノロジーで向かい合うしかない。ライフサイクルアセスメントもしっかり対応する必要がある。昨年の国際会議ICEFでは、私もコーディネーターとして、プラスチックのセッションの進行役をさせていただいた。リデュース・リユース・リサイクル、それからリプレイスの3プラス1Rという、基本的な解決法を考えた上で成功させるのが、我々の義務だと思う。
(3) 講演
プラ騒動を2Rの追い風に!
浅利 美鈴氏
(京都大学大学院地球環境学堂 准教授)
- 大学でもビジネスでもいろいろな取り組みをしている。最近は、環境や持続可能性・SDGs関連の活動に熱心に参画する学生が出てきている。
- ごみ研究の原点は、1980年に京大名誉教授で環境漫画家の高月紘先生と京都市の方々が始めた、家庭ごみの細組成調査ではないか。今年で40年。毎年同じ地域の100世帯100袋くらいを、ほぼ1ヶ月かけて、学生や私たち、京都市の方など40人がかりで調査する。素材、用途、形状など300種類くらいまで分類して分析。40年分のデータは非常に貴重ではないか。
- 燃やすごみの重量内訳は、どこも同じだと思うが、水分を含む食料品がかなりを占める。昨年 10月に京都市南部クリーンセンターに新たな工場がオープンし、この規模で初めてバイオガス化施設を併設した。ヨーロッパやアジアでは当たり前だが、日本では画期的。
- 紙おむつやレジ袋など、40年前は項目すらなかった使い捨て商品が、今はごみの2割ぐらいを占める。多くがプラスチック。紙おむつは、幼児用よりも大人用のほうが増えている。
- 自分の箸や茶碗を識別する日本人独特の感性について、京都大学教育学部の先生からお聞きした。逆に、100均については捨てても良い心理が働き、多くの商品がプラスチック。 使い捨てをやめることや、プラスチックをもっとありがたく感じる感覚が必要だと思う。
- ごみをかさで見ると、レジ袋を含むプラスチック製の容器包装が多い、ストローは1パーセント以下。安く買ってもかさばって処理のネックになるのが、プラスチックの容器包装。費用も重要な問題ではないか。
- 京都市の100年間のごみ排出量の推移を見ると、第2次世界大戦の10年後ぐらいから、前オリンピック、オイルショック、バブル景気も経て、ごみが増え続けた。ピークは、日本全体の一般廃棄物と同様の2000年。京都は、その半減以下を目指して取り組み、去年、半減を達成。今それ以下をめざして格闘中。半減した分の4割は、ごみ袋の有料化による。
- 大量生産・大量消費・大量廃棄の次の価値観を探すのも私達の責任。「地球銀行破産寸前」は、漫画ではない状況。まず一歩として流れ出る資源やエネルギーの量を絞りつつ、金の量をいかにキープするかが問われている。2R時代到来だが、これを本流にしていくのか真剣に考えていきたい。
(4)事例発表
1. 京都市のリユースびん回収の取り組みについて
宮本 博市氏
(京都市環境政策局 循環型社会推進部 まち美化推進課 業務推進・減量推進担当課長 )
- まち美化推進課の担当は、家庭から出るごみの収集運搬、そして、市民のみなさんが自主的に行う町内の資源回収や生ごみ堆肥化などの市民のごみ減量活動支援の大きくふたつ。
- 京都市は、人口147万人、面積は828万km2。平安京以降長い歴史の中で暮らしの文化、季節の行事や祭りを受けつないでいる。観光客も昨年度は5,275万人と多く、それらのごみも含めて処分している。
- 平成18年10月にごみを有料化し、ごみ袋1Lあたり1円、資源物は半分の0.5円。ごみはピーク時の半分に減り、1人あたり400g以下と全国的にも非常に少ない。
- 家庭系、事業系ごみの総量は41万トンで、目指すのは39万トン。今年はあまり減っていないので、食品ロス、プラスチック問題、紙ごみの3つに絞ってごみ減量施策を進めている。
- リユースびんは、行政として、平成16年6月に市内8ヶ所のスーパーで回収を開始。21年2月から一升びんとビールびんに限定し、現在は162ヶ所。昨年は、7万7,400本、71トンを回収。
- 缶、びん、ペットボトルを合わせて分別収集しているが、びん7,000トンのうち、対象外のリユースびんが16トンほど混入している状況。資源物として18品目を回収しており、どこに何を持っていけるのか、ホームページの「資源物回収マップ」で調べられる。
- 移動式回収拠点は、昔の小学校区を単位に市内220箇所で2年に1回ほどの頻度で回収。地域の取り組みは、コミュニティ回収として町内会やマンション単位で、古紙、雑紙、古着、缶・びん・ペットボトル等を回収し、年間1万5千円ほど助成金をお支払いしている。マーケット回収は、商業施設の駐車場、空き店舗などを活用し、行政区1か所ごとに福祉施設などの団体が実施している。
- 京都は、長年都が置かれ、古くから都市として発展してきたことから、多彩なものの流通や技術の発展により、分業とネットワーク化が進んでおり、作り手と売り手、買い手のネットワークが色々な分野で発展している。その暮らしのなかで日頃質素に節約するのを「しまつ」と言い、廃棄物の条例も「しまつのこころ条例」と愛称をつけてその心を伝えている。
一升びん入りの日本酒は、兵庫県が明治34年に始め、京都は明治41年。しかし、古くから続くネットワークを生かして、リユースびんや古紙回収が行政の支援がなくとも広まった。 - 家庭ごみ収集では、分別収集の開始が昭和51年。空き缶のモデル収集を実施したのを皮切りに、約40年やってきた。リユースびんが100年、市の分別が40年というところで、非常に長い歴史がある。
2. 地域におけるびんリユースの展開
〜リユースびん入り大和茶『と、わ(To WA)』の活動を通して〜
中島 光氏
(WorldSeed 副代表理事 )
- 今年3月で丸11年目を迎えるNPO団体で、事業のひとつがリユースびん普及促進事業。
- 奈良県の奈良市と生駒市と共同でリユースびん入りの新たな商品開発をし、私どもNPO団体と共同で、どのような仕組みづくりができるか検討してきた。我々の目的として、リユースびん入りの商品について広く視覚的に情報発信し、環境的な価値を伝えたいと考えてきた。
- 中身メーカー、原材料を提供する事業者、リユースを担当する流通事業者様の3者と連携し、地球環境負荷の軽減と、地域経済の寄与の2つを軸に開発。リユースびん入りの大和茶『と、わ(To WA)』という商品を、2012年の11月にリリースした。奈良県を中心とする地方公共団体や、ホテル、旅館等で、今日まで安定的な普及展開を継続している。
- 地域経済の発展にも寄与したく、歴史が深く奈良県で愛されてきた日本茶として、奈良県産の大和茶を採用した。
- 製造事業者と流通事業者と連携し、商品の安定的な供給と確実な空きびん回収をする流通のしくみが構築できた。他府県においても、きちっと普及かつ空きびんの回収ができるびんリユースシステムができている。
- この製品を、奈良市、生駒市では会議等で率先して利用。2012年に環境首都創造自治体全国フォーラムを生駒で開催したときも、ペットボトル飲料を出すことなくリユースびん入り飲料を全国の皆様に普及・展開した。ホテルや飲食店でも積極的に営業し、利用いただいている。
- リデュース・リユース・リサイクル推進協議会様の会長賞を通して、取組を全国的に発信している。中央環境審議会と産業構造審議会の第1回合同会合でも、容器包装についての審議だったが、ペットボトル入り飲料を出すことなく、会議用飲料として提供した。
- 昨年11月で丸7年。地域の細々とした事業だが、奈良県中心に近畿圏で販売展開し、累計の販売本数は現在9万本以上。2012年12月に2万本新びんを調達し、回収率は90%以上にのぼり、新たに2,000本のびんを調達した。
- 現在は、株式会社桶谷さんに販売権限を一任。ワールドシードは企画元として、事業の全体の管理と情報発信を引き続き行っている。
(5) パネルディスカッション
テーマ: びんリユースシステムが未来を創る 〜“環境>利便性”へのパラダイムシフト〜
ファシリテーター: 下村 委津子(認定NPO法人環境市民 副代表理事)
下村氏の進行による質問に対して、各パネラーが以下の通り回答しました。
○ 浅利氏
(京都大学大学院地球環境学堂 准教授)
- リユースびんは、基本的に、缶・びん・ペットボトルの袋の中に入っており、先程紹介した燃やすごみなどにはあまり入っていない。たまにビールびんがあるが、驚くことにペットボトルや牛乳パックなどがかなり出てくる。
- 京大式プラチャート「プラ・イド」は化石由来のプラスチックを位置づけるもの。チャートでは、化石資源のプラスチックの周りに、安井先生のおっしゃるリプレイスされるべき相手としてびんがいる、というような位置付け。
- 私達の活動では一つの正解はないと考える。気付かずにしていることが一番恐ろしい。今の状況でどういう選択をするのが一番いいのか、常に問いかける。シェアの流行りなどで色々なメーカーが「リユースに取り組みたい」と相談に来て、学生にぶつけてくれている。そういうところから、新たなリユースも生まれるのではないか。
- 地域循環共生圏の話は、勉強がいる。京都の京北エリア・中山間地域ではリユースをインフラとして使うことが有効など、リユースが成り立つ希望の提唱が必要。固定概念にとらわれずに挑戦すること、一足飛びに税金に頼るのではなくもっと価値を高めることも大切。
- いまの機運を生かさないとチャンスはない。リユースびんは可能性を秘めている。
○ 宮本氏
(京都市環境政策局循環型社会推進部 まち美化推進課 業務推進・減量推進担当課長)
- 京都市で分別収集しているびん・ペットボトルは、昨年度で約1万3,000本、その中の飲料びん7,000本も、混入されたリユースびん16トンも、有料化以降年々減少しているが大きな傾向の変化はない。詳細は、ホームページに掲載。
- 京都市には細かいものからざっくりしたものまで様々な資料を掲載している。
- リユースびんの存在に気付く人たちを増やすことが必要。様々な品目の資源物回収の活動があり、リユースびんも一緒にやっていくのが大切。中学校・高校の環境教育でも詳しい説明資料はあるが、普及に向けては課題があると思う。
- 京都市が経典回収している資源物は18品目あり、非常に複雑で難しい。覚えきれないという市民の声もあり、ジレンマも感じる。リユースびんの仕組みは続くと思うが、資源物全体の比重としては少ない。ただ、リユースという点では、資源物回収しているものの中でもいちばん大事な事業と捉えている。
○ 堀氏
(京都市ごみ減量推進会議 コーディネーター)
- 容リ法上、特定事業者が負担するペットボトルのリサイクル委託費用はないに等しい程下がり、その状況でリユースびんを頑張るといっても難しい。せめて、1割、2割の市民消費者の理解がないとできない。
- 使い捨てプラスチック使用の多さを知ってもらう取組を、今年度は7校9クラスの大学に実施。受講前後のアンケートで、ペットボトル飲料を1日500ml1本以上利用する学生が、46%から8%程に減り、6週間後のフォロー調査でも10数%くらい。情報さえ提供すれば、代替手段を選択する人は確実に増えると思う。
- パラダイムシフトが遅かれ早かれ起こる。経済活動に環境要因が入らざるを得ない状況で、びんリユースの活動も入り込む余地がある。
○ 中島氏
(WorldSeed 副代表理事)
- 「と、わ(To WA)」の国際会議などでの提供はタイミングや調整が難しいところもあり、まだ残念ながら導入には至っていない。仕組みとしては可能。環境省など国の担当部署の方と話しつつ、丁寧な調整が必要と思う。
- 「と、わ(To WA)」の7年間9万本は、事業全体で見た場合、それほど大きくない数字。最初は流通業者も循環するか心配したが、商品化から3年かけて商流に乗るという判断をいただき、継続した販売展開ができている。
- 環境省からペットボトル使用の原則禁止の通達があったが、今後、国際会議についても普及団体から環境省へ話すことで進むのではないか。京都は、環境や文化の土壌があるので、リユースびんのビジネスチャンスがある。
○ 吉川氏
(全国びん商連合会 会長)
- 拡大生産者責任は西欧と日本の社会システムの一番大きな違い。ドイツ、デンマーク、スウェーデンなど、その責任を果たす国のリユースびん使用率は高い。日本ではリユース容器とワンウェイ容器の土俵が違う。ワンウェイ容器が有利な仕組みとなっている。
- 日本では環境負荷が小さいリユースびんは事業者が回収し、税金は投入の必要がない。一方で、ワンウェイ容器は収集に最も費用がかかるが、容リ法の定めで自治体の負担となっており、税金が投入されている。商品製造にかかる経費として内部化されない。
- フランスも自治体が回収するが、平均的なモデル自治体を想定して算出された収集経費を産業界に請求する。これが今の日本に一番近いと思う。世界の中で最低限しないといけない事柄ではないか。二度の署名活動も通して、改正して責任分担を変えていく話は国にも通っているのに変わっていかない。
○ 中尾氏
(宝ホールディングス株式会社 環境広報部環境課 課長)
- リユースの仕組みに危機感を抱いている。15年前に年間約1,500万本利用していた一升びんが、今は約500万本。ただ、近未来的な光明もある。AIや5G、IoT、自動運転などが実用化されつつあり、社会システムの変革期にある。
そこでは、店に足を運ばない新しい購入形態が主流となったり、物流や回収の無人化などが想定され、これらの実現はびんリユースの追い風になるのではないか。無人の配送や回収が仕組み化されると、割れる・重たいなどのびんのネガティブ要素が軽減され、保存性や装飾性などびんの魅力的な部分が脚光を浴びる可能性もある。 - 仕組み化の際は、びんリユースがしっかり組み込まれるための働きかけが必要。びんのリユース単独での仕組みを構築するのではなく、ほかの資源ごみ回収の仕組みと合わせて考えるべき。ただ現状は厳しい。そこまでどう繋ぐか。びんのリユースの阻害要因には様々あるが、このことについて多くの人が状況を知らない。例えば企業内でも同じで、びんのリユースにはP箱出荷が欠かせないが、安易に段ボール出荷にきりかえるところがある。繰り返し情報発信し、啓発してくことがが大切。
- 小学生への環境教育では、大人より意識が高くフレッシュで素直な感覚もっており、将来に希望を感じる。社会の環境への意識を高めていくことで、リユースも見直してくれるのではないか。
○ 辻氏
(日本山村硝子株式会社 環境室 室長)
- ガラスびんには、重い・割れるという欠点があるので、これまでは、軽くて割れないものを開発しようと努力してきた。原料を減らした軽いものをリユースできず、使い捨ててしまうことになる。リユースを考えると、軽さの限界はある。
- 重いびんも持ち運びしなくていい場面では使える。そういうことを消費者に訴える必要がある。
- 自治体により回収方法が違うので、良い事例を紹介して分別方法を伝えることも大切。そこでも連携が必要。
- リユースびんの良さを広め、また土壌ができた時にびん供給できるように準備したい。
○ まとめ
下村氏
ここに行ったら買える、返せるという知らせが重要。持ってきてもらえる仕組みのなかにリユースびんを組み込むことも大切。消費者の側からも求めて残していくことも大切だと感じた。公害国会は地域の取組が国を動かした事例。自分たちの地域を変えられずに国は変えられない。足元を変えていく、行政を変えていくことで国も変えていくことが大切。
司会 田中氏
環境省の再委託事業である「びんリユースの回収拠点の把握・利用促進に向けた調査検討業務」として、大阪硝子壜問屋協同組合作成のリユースびん回収拠点マップを活用した自治体との連携取り組みを模索していたが、寝屋川市がWebサイトのリユースびん回収拠点マップのリンクを貼付してくれたことをお知らせする。リユースびんという資源の有効活用事例として期待したい。
(6) 閉会挨拶・講評
安井 至 (びんリユース推進全国協議会 代表)
海外の仕組みにうまく乗っかるのもいい手かもしれない。海外事例もあり、いいチャンスを与えてられている可能性がある。