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びんリユース推進に向けたステークホルダー会議 開催

日 時 2019年3月20日(水) 14:00〜17:00
場 所 日本ガラス工業センター 会議室
主 催 びんリユース推進全国協議会

びんリユース推進全国協議会は、環境省請負事業として「びんリユース推進に向けたステークホルダー会議」を東京都新宿区で開催しました。
安井代表による世界的動向からびんリユースの未来像を読み解いた基調講演や、吉川副代表による話題提供を踏まえて、びんリユースの未来について、立場の異なる関係者が参加しての検討・意見交換をワークショップで行いました。

ワークショップ

開催内容

(1)開会挨拶
環境省 環境再生・資源循環局 総務課リサイクル推進室 丸山 祐太郎氏
(2)基調講演
「世界的動向から読み解くびんリユースの未来像」
びんリユース推進全国協議会 代表 安井 至
(3)話題提供
「リユースびんの環境負荷とRE100への可能性」
 びんリユース推進全国協議会 副代表 吉川 康彦
(4)ワークショップ
(5)全体講評
びんリユース推進全国協議会 代表 安井 至
(6)閉会挨拶
びんリユース推進全国協議会 副代表 田中 希幸


(1)開会挨拶

丸山 祐太郎氏

丸山 祐太郎氏
(環境省 環境再生・資源循環局 総務課リサイクル推進室)

  • 近年、プラスチックについて、地球規模での資源廃棄物制約や海洋プラスチックごみ問題による汚染防止が、SDGsでも求められている。
  • びんリユースは、製造、流通、消費、回収、洗びんなど多様な関係者の連携によって体制が構築されている。消費者、事業者、自治体等の協働により主体間の連携強化を図ることで、地域の取り組みが進み、リユースが促進されていくことが重要。

(2)基調講演「世界的動向から読み解くびんリユースの未来像」

安井 至
(びんリユース推進全国協議会 代表)

安井 至代表

  • 世界が急速に動き、特にCO2、海洋プラスチックの問題など、人類の選択に関わる課題が問われている。新しい利便性の高いものが必ずしも良いわけでないというのが、ひとつの大きな流れ。
  • 2015年9月の国連でのSDGs合意をターニングポイントとして、これから先がまったく予想つかないのが環境の現状。
  • ワークショップでは、SDGsの内容なども踏まえ、テーマAのグループは、利便性・効率性を減らすことによるサステナビリティの増加などを議論し、テーマBのグループは、地域循環共生圏の内容をこの機会に共有できたらと思う。テーマCのグループは、未来社会でTPOに合わせてリユースびんが活用されている、色々なパターンを考えていただきたい。
  • 2018年10月発表のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)特別報告書によると、2050年までに1.5℃程度の上昇に抑えることが有効と思われるが、その実現は困難。大気中からのCO2吸収(DAC)や、エネルギー作物を使ったバイオマス発電で排気中のCO2を集めて埋める(BECS)などが必要と思われるが、BECSの実現にも大きな課題が残る。
  • 地域循環共生圏とは、内閣府によるSociety5.0の実現が手段のひとつと考えられる。何かを循環させることで、自立分散している地域が他の地域と相互に連携することによって、互いに共生する状態、という解釈ではないか。九州大学島谷教授により、阿蘇地域を中心とした研究が行われている。

(3)話題提供「リユースびんの環境負荷とRE100への可能性」

吉川 康彦
(びんリユース推進全国協議会 副代表)

吉川 康彦副代表

  • 日本国内では、年間680億本の容器が消費され、本数によるリユース率は3.4%。正確な計算ではないが、日本全体のCO2年間1.29Gtの1%前後を680億トンの容器が排出していると思われる。
  • 「LCA手法による容器間比較報告書」(2001年)を、現状を考えて個人的に修正したところ、ワンウェイびんはかなり環境負荷が大きく、現状のビールびんはかなり理想に近いリユースびんであることがわかる。また、京都市内を30km圏内として2tトラックで回るケースを想定した場合、20回再使用のリユースびんの排出量は低く、小さな地域での循環は環境負荷にかなり有効。
  • 一升びんについて、回収→洗びん→酒造会社へ納入にあたる容器1本あたりのCO2排出は、京都市内30km圏で0.13kg、100km圏で0.15kg、500km圏で0.2kg程度。また、洗びんは新びんと比べて1〜2割り程度で、環境負荷が低い。
  • 太陽光発電については、弊社のケースでは、4年間に導入した840枚の太陽パネルが発電する電力は1kwhあたり15円80銭程度。昨年導入したばかりの56枚の太陽光発電は1kwhあたり12円80銭(設置費用を20年間で想定される発電量で割り算出)。電力会社の買電では20円強であり、安く電気を使える計算となる。
  • ドイツでは日本に先駆けて容器間のLCAが公表された。1969年から市場化され7年間で平均50回再利用されているパールびんもある。

(4)ワークショップ

参加者が、6つのグループに分かれ、2グループごとに3つのテーマ(「地球のサステナビリティと利便性・効率性」「リユースを中心に据えた地域循環共生圏はどんな風?」「ガラスびんの特性を未来社会に活かすには?」)について、ディスカッションしました。

びんリユースの推進に向けて立場の異なる関係者が参加して、今後の方向性、必要な方策等について検討・意見交換することが目的です。ディスカッションは、次の通りの、ゴールイメージに向けた3つのステップに沿って進行し、終了後に内容の報告が行われました。


ワークショップ
【テーマA】
地球のサステナビリティと利便性・効率性
〜今の便利を選ぶのか、未来のための選択をするのか〜
  • ゴールイメージ:びんリユースが増えると地球はサステイナブル
  • ステップ1:日常生活の中で使っている容器包装(びん)はどんな利便性?
  • ステップ2:その利便性は必要か? 地球のサステナビリティとトレードするのか?
  • ステップ3:利便性を手放すと、どんな容器包装か。地球にどのような良い影響があるのか?
【テーマB】
リユースを中心に据えた地域循環共生圏はどんな風?
  • ゴールイメージ:リユースを循環のコアとする共生圏を作る
  • ステップ1:地域循環共生圏の個人的イメージ?
  • ステップ2:そのために循環させる可能性があるものは何か? その循環が何を生み出すか?
  • ステップ3:リユースを循環のコアにするということを具体的に考えた社会の未来像とは?
【テーマC】
ガラスびんの特性を未来社会に活かすには?
  • ゴールイメージ:未来社会では、TPOに合わせてリユースびんが活用されている!
  • ステップ1:ガラスびんは他の容器と機能・環境負荷がどう違う?
  • ステップ2:TPOに応じて求められる容器の機能
  • ステップ3:どのようなライフスタイルを選択すれば、サステイナブルな地球になるか?


○ ワークショップの報告

【テーマA:グループA1、A2】
ワークショップグループA1
ワークショップグループA2

ステップ1:日常生活の中で使っている容器包装(びん)はどんな利便性?

  • 利便性としては次のような要素がある。保存性、安全性、密封性、携帯性、量が把握できること、中身を運ぶ役割、中身を見せずプレゼントや日本人の奥ゆかしさと相性が良いこと、デザイン性などの付加価値がつけられること、品質表示などができること。
  • リユースとリサイクルの区別がわかりづらい、デザインをどこまで統一する必要があるのか、小売業者は静脈物流への責任をもつべきなど、利便性に伴う課題がある。

ステップ2:その利便性は必要か? 地球のサステナビリティとトレードするのか?

  • プラスチックごみの抑制・管理、再生エネルギー資源への完全転換、ネットジェネレーション実現のシステム、100%リユースなどを踏まえた上で、トレードする。最終目標は、CO2の削減、温室効果ガスの排出抑制、海洋プラスチックごみ排出の減量・規制。そのために必要なのは、コンビニエンスストアや小売店などによる回収やデポジットのシステム構築などSDGsのゴール11の「住み続けられるまちづくりを」にもある地域のコミュニティの復活。また、製びん業者や販売者、消費者もびんの処理まで責任を持つなどSDGsのゴール12の「つくる責任・つかう責任」を持つこと。
  • 究極的には、トレードはしてはいけない、命と引き換えにはできない、という意見になるが、利便性の中で一番捨てられないのは、持ち運びするという役割ではないか。

ステップ3:利便性を手放すと、どんな容器包装か。地球にどのような良い影響があるのか?

  • プラスチック容器をなくしてリユースびんを使うことで、サステイナブルな社会ができる。コンビニエンスストアやAmazonでの回収を進めていくことも、それにつながるのではないか。
  • 多様なサイズ、スクリューキャップ、軽量性などを備えた統一びんをリユースする。公共施設や宿泊施設など、滞在時間が長い場所ではリユースびんを使用。
  • 中身を持ち運ぶ役割を保ちつつ環境負荷を軽減できるのは、ガラスの容器や大容量容器、マイボトル、組み立て式の容器、リユース容器など。
  • 必要なことは、法規制と教育・啓発。法規制としては、量り売りの拡大、プラスチック容器の製造不可、コンビニエンスストアやスーパーで売らず地域という小さな範囲ならOKにする、など。教育・啓発としては、CMや報道、ドラマでのアピールも効果があるのでは。今あるプラスチックを回収するなど、汗をかくことも大事。

【テーマB:グループB1、B2】
ワークショップグループB1
ワークショップグループB2

ステップ1:地域循環共生圏の個人的イメージ?

  • 経済的に成り立ち、また、リユースが地域の活性化や災害時に役に立っているのが理想の姿。災害時は、リユースの持っているポテンシャルが発揮されやすい。リユースのしくみが十分に構築され、消費者に対して、リユースに対する知識だけでなく「リユースはすばらしい。手間を掛けてもやってみよう」という意識が浸透していくことが必要。
  • 情報、人情といった「情」が動く社会というイメージ。シェアやリユースが当たり前、大量消費社会が終わっている社会。

ステップ2:そのために循環させる可能性があるものは何か? その循環が何を生み出すか?

  • プ行政レベルでは、リユースを後押しするための税制面での優遇。企業の努力としては、ポイントの還元や、より割れにくいガラス、多様化した共通びんの開発。回収拠点、洗びん拠点などしくみの整備がまだ必要。消費者の意識を醸成するため、学校だけでなく、企業、NPOなどによる、生きた環境教育も重要。
  • 衣食住、子どもに必要なものを循環させる。一時的に使う赤ちゃん用のものなどは、使い回して販売する動きが今も出ている。飲料容器の循環も必要。それにより、助け合い、共にみんなで使う、援助、サービスなどによって実現される、今の社会とは異なる新しい経済合理性が構築される。

ステップ3:リユースを循環のコアにするということを具体的に考えた社会の未来像とは?

  • 容器やリユースのしくみが、社会の共通財産となっていることが理想。どのような段階、方法、順番で達成していくのかが課題。
  • 脱プラスチック、人材の交流、リユースびん主体が実現。また、地域循環共生圏としての社会の根底にあるのはIoTで、それにより情報が発信やシェアされる。個人の価値観が大切にされる社会。

【テーマC:グループC1、C2】
ワークショップC1グループ
ワークショップC2グループ

ステップ1:ガラスびんは他の容器と機能・環境負荷がどう違う?

  • ガラスびんは、環境負荷の点では化石燃料を使わない容器であるが、消費者の利便性を考えないといけない面がある。機能としては、高級感、衛生面、耐久性などの特性がある。
  • 割れる、重い、栓抜きがないと開けられない、一度開けるとリキャップできないなどのデメリットがあるが、リターナブル、デザイン性、感性、美しさ、叩くといい音がするなどの面でのメリットがある。

ステップ2:TPOに応じて求められる容器の機能

  • 製造の場では、割れにくいことが重要。リユースびんを広めるためには、全国統一が可能な商品に使うことや脱プラスチックが求められる。流通・販売では、割れる心配や重さが気にならないことが重要。中身の価値を上げることも大切。リターナブルびんに求められるのも、軽さや割れにくさが非常に求められている。

ステップ3:どのようなライフスタイルを選択すれば、サステイナブルな地球になるか?

  • 環境対策、びんの製造時のしくみづくり、意識づくりの継続は必要だが、意識のある人だけでなく、意識しなくても自然にリターナブルびんを選択できることが大切。そのしくみやマーケットを作っていかないとなかなか難しい。
  • 「はひふへほの生き方」(半分でよい、人並みでよい、普通で良い、不自由でもない、減っても良い、下手でも良い、ほどほどでよい)をする。リユースしていることを、かっこいいと楽しむような教育が必要。その結果、リユースが生まれる。広い範囲での経済活動ではなく地域の循環、統一も重要。

(5)全体講評

講評 安井 至代表

安井 至
(びんリユース推進全国協議会 代表)

他の人が考えないようなことを考えた社会にしないと、日本は勝てない。

グループAについては、日本は、利便性・効率性を追いかけて世界に勝ってきた。それがだめになってきた時に何を哲学とするかを考えることが必要。たとえば、ガラスびんは流通が悪い点が大きな欠点なので、割れないガラスから作ろう、というような考えはどうか。また、世界でもっとも親切、最もうまい食事の国と言われる日本で、世界でいちばんおいしいリユースびんに入った飲料を作る、など。

グループBについては、地域循環共生圏は難しい言葉だが、IoTによる循環という意見がでてきたのが収穫。個々のリユースびんがネットに登録されるという視点から、何か新しいことができないか。どれだけの回数が使えるかを競うガラスびんの最長寿コンクールなど。

グループCでは、これからを生きる最近の若者のライフスタイルを見ると、ほしいものがない、近い仲間だけで情報共有していればいい、という傾向がある。新しいびんを作るという意見とつながるか、全部形を変えたリユースびんというのは難しくても模様が違うびんを作って価値観をもたせ、インスタグラムに載せて喜んでもらうというような考えもある。

資源のプライシングは可能で、リユースびんを100回使えば100分の1になる。国に頼るのではなくそのような視点から考えることも大切だろう。


(6)閉会挨拶

田中 希幸副代表

田中 希幸
(びんリユース推進全国協議会 副代表)

  • 本交流会を通じて、立場の異なる人の意見を聴き、新たな気付きや知見が得られたり、参考になったら幸甚。
  • 今後のびんリユース推進に向けて参考にしていきたい。