活動報告
「名古屋から びんビンBegin 〜地酒×リユースびん=未来〜」
<中部壜商連合会>
開催概要
開催日時 | 2016年11月17日(木) 19:00〜21:00 |
開催場所 | GREEN ROOM (愛知県名古屋市中川区かの里3丁目102) |
名古屋市内の飲食店で、中部壜商連合会が主催するびんリユースのワークショップが開催されました。
当日は、びんリユースに携わる方から一般の方まで、約30名が参加。リユースびんを使用している地酒『めぐる』『奏(かなで)』を実際に試飲しながら、びんリユースの今と未来について、活発な意見交換を行いました。
ワークショップ内容紹介
開会挨拶・趣旨説明
中部壜商連合会 / 株式会社安田商店 代表取締役 安田 一機 氏
「本日はお忙しいなかお集まりいただきましてありがとうございます。中部壜商連合会を代表して御礼申し上げます。
リユースびんを知っている方も知らない方も、いろいろなことを発信してもらって、びんが今どのような状況にあるかということを少しでも持ち帰って周りの方たちにお話ししていただければ、本当に良いワークショップになったと言えると思います。硬い雰囲気は抜きにして、美味しいお酒と食事をいただきながら、和気あいあいと2時間楽しんでもらえればと思っています。よろしくお願いします。」
行政挨拶
名古屋市環境局ごみ減量部 減量推進室 主査 伊藤 直起 氏
「私は名古屋市の環境局でごみを減らす仕事をしています。今から17〜8年くらい前、名古屋市はごみが増えすぎて燃やすところもなければ埋めるところもないという状況で、何とかごみを減らさなければいけないということで、平成11年2月に『ごみ非常事態宣言』を発表しました。当時は100万トンほどあったごみが、今では4割ほど減って62万トンとなっていますが、ごみは少ない方がいいということで、分別してリサイクルしようという取り組みをずっと進めてきました。
びんも、実はリサイクルできます。色ごとに分けて細かく砕いて、また新しくガラス製品やびんを作るということで、リサイクルの優等生なんです。でもリサイクルをするには、集める手間や時間、労力がかかります。リサイクルは万能ではないんですね。一方で、びんはリユースができるものです。今日ご用意させていただいております『めぐる』や『奏』は、リユースされたびんに入っています。一回使用されたびんを、きれいに洗浄してまた新しい製品を詰めて世の中に送り出すということで、これは手間も時間もエネルギーもリサイクルとは比べものにならないくらいかからない、非常にすぐれた商品です。けれど、そのリユースびんが最近どんどん数を減らして、絶滅の危機にあります。
今日はワークショップで皆さん和気あいあいと話し合っていただいて、どうやってリユースびんを増やしていこうかというヒントを得られればいいかなと思います。」
日本酒試飲
会場では、水谷酒造の製造する日本酒『めぐる』『奏(かなで)』の試飲が行われました。実際にリユースびんを使用した商品、資源の循環をコンセプトとして生まれた地酒を味わうことで、参加者にびんリユースをより身近な取り組みとして感じてもらうことも、このワークショップの狙いのひとつです。
『めぐる』は、資源循環型社会を目指す想いから誕生した、地産地消型の地酒。名古屋市内で発生した生ごみを堆肥化して使用し、弥富市で生産された米「おかえりライス」(品種は一般食用米「あいちのかおり」)を原料としています。Rマークのついたリユースびんに詰められており、びんは消費者が回収に協力することで再びリユースされます。『めぐる』を通じて、「食品リサイクルの輪」と「びんリユースの輪」という二種類の循環が生まれています。
『奏(かなで)』は、愛知県産の酒造好適米「夢吟香(ゆめぎんが)」を使った純米大吟醸。『めぐる』と同じく地産地消型の商品で、リユースびんに詰められています。『奏』の名前には酒造りに関わった「みんなで奏でる」という意味が込められています。田植えや稲刈りなどの米作り体験、酒造り体験などを食育イベントとして実施しており、家族連れや外国人など多くの参加を得ています。
※『めぐる』についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています
名古屋を循環するリユースの心 <中部リサイクル運動市民の会>
水谷酒造挨拶
水谷酒造株式会社 代表取締役 水谷 政夫 氏
「環を作ってみんなで協働して世の中を良くしようということで、行政やNPO、酒造会社、農家など、いろいろな方と一緒に、CO2の削減や生ごみの減量といった取り組みを行いながら酒づくりをさせていただいております。ただ、そのリサイクルの環・リユースの環の中で、まだ非常に弱い部分があります。飲食店や酒販店、消費者の方々にご理解いただき仲間になっていただかないと、絵に描いた餅で終わってしまいます。商品が出ないとびんは回らないものですから、皆さんにもぜひとも消費者としての側面も持っていただいて、こういった商品をご購入いただく、友人にすすめていただく、何かのときに使っていただくということが必要です。
当社では黒いびんの1商品を除いてすべてリユースびんを使っております。なぜリユースびんを使うのかというと、やはり新びんより価格が安いという経済的な部分でのメリットがあるということ。あとは、リサイクルして資源にする前にリユースした方がCO2の削減に貢献できるということ、何でも使い捨てるのではなく物を大切にしようということ。小さな会社ですので、循環型社会を作る一助として、少しでもお役に立てればということで取り組ませていただいています。
ただしリユースびんを使うにあたっては良いことばかりではなく問題点もありまして、びんに傷や汚れがあったり、それを目視でしっかりチェックするのに多少コストがかかるという部分です。黒いびんも一時期リユースびんを使ってみたのですが、黒いと少し(リユースびん特有の)筋が目立ってしまうのと、回収率が良くないので、新びんの方が良いんじゃないかと。また、昨年当社の酒をミラノ展示会に出展したところイギリスで商談をいただき、やはり新びんでないとなかなか難しいのかなと思っています。単価の高い商品になってくると、新びんの方が安心感はあるというのがメーカーの正直な意見です。
もともとリユースびんをよく使っていたのですが、ロスや不良壜が多い時代があったので、一時期は新びんに切り替えていました。ただ人の輪というのがきちんとできてきて、良質のリユースびんを出していただける業者さんのものだったら商品に使えると感じたので、当社としても、少しでも世の中の役に立てるリユースびんというものを積極的に、全面的に使っていきたいなと考えております。
人の輪を作っていくとなりますと、消費していただく方たちが本来は主役なんです。主役不在のまま舞台が進んでいる状況もございますので、より多くの主役の方を集めていただくということを、今日は皆さんにぜひともお願いしたいと思っております。」
びんリユースについての説明
東海地域びんリユース推進協議会 会長 / 名古屋大学大学院環境学研究科 松野 正太郎 氏
「どうやって酒びん・ビールびんが流通しているのかは、皆さんよくご存じだとは思いますけれども。水谷酒造さんのような中身メーカーから問屋に行って、皆さんが買われるようなスーパー、コンビニ、酒屋などに行き、それが消費者のところで飲まれるわけですが、飲んだあとにどうなるかが問題です。サザエさんでいうところの三河屋さん(酒屋の御用聞き)がいた時代は、空きびんは回収されて酒屋に戻って、そこからびん商へ戻って、きれいになって問屋や中身メーカーに戻る…、民間のビジネスでそういうことをやっていました。ところがそういう流れが潰れてしまって、消費者から今度は行政の回収に出ていくようになった。一部はびん商のようなところで抜きますけれども、多くの場合は砕いてガラスの原料としてリサイクルされており、リユースされることがなくもったいないという状況になっています。―――さて、今の中で何が問題かというと、びんが回らなくなってしまったということ。以前は消費者のところまで来たびんが中身メーカーのところまで戻っていたけれど、行政の回収に出されたびんは(リサイクルされてしまうため)途中で止まってしまい中身メーカーまで戻らないから、リユースできないということです。
何故びんのリユースが減ってしまったのかと考えると、その要因は4つくらいに整理できるのかなと思います。今申しましたように、酒屋の御用聞きがなくなって行政回収の方に流れるようになってしまったとか、そもそもびんに入っている酒類などが減ってしまったという『社会・経済的要因』。それから『制度的要因』もあります。コストの問題、あるいは法律の問題。容器包装リサイクル法という法律がありますが、これはリサイクルをするための制度でリユースをするための制度ではない。だからそれに則ってリサイクルばかりが進んでしまう。そして『中身メーカーの方針』。先ほど水谷さんのところではリユースびんの方が安いから使うという話もありましたが、年間何億本も作るような会社だとそうではないかもしれない。あるいは、何かで口が欠けてしまったなどのリスクがあると、メーカーはすごく嫌がります。何億本のうちの1本でも口が欠けていたら責任を取らなければならないので、リスク回避を考えて新しいびんを使う。
また、皆さん『消費者の意識』はどうでしょうか。びんよりも紙パックやPETボトルの方が良いというのには、割れないとか軽いとか安いとか理由は色々ありますが、そういった状況もあってびんの量が減っています。それから返す場所。昔は(酒屋が)酒びんを持っていってくれたけれど、今はどこに返したらいいか分からないので行政の回収に出す、ということになるわけですが、果たして行政が回収した中でリユースがどれだけされているのか。ゼロとは言いませんが、多くは砕いてリサイクル原料として使っている状況です。そもそも、今日ここに来ている皆さんはリユースなんて今さら説明はいらないという方が殆どかもしれませんが、一般的にはリユースやRマークのことを知らない方が多い。それをどうやって知ってもらって、飲んでもらって、返してもらうのか。この10年20年、ずっと状況が変わらないどころか悪くなっているのをどうやって打破するのかが、これからの課題です。その糸口を、今日皆さんと考えたいと思っています。」
グループワーク
食事をしながらのグループワークでは、4つのグループに分かれてびんリユースについての意見を交わし、最後にグループごとの意見を取り纏めて発表を行いました。
行政、びん商、中身メーカー、びんメーカー、消費者、などそれぞれの立場からの率直な考えを言い合うことのできる貴重な場として、びんリユースの現状や普及についての様々な見解やアイデアが飛び交いました。
当日挙げられた主な意見をご紹介します。
○ リユースびん入り商品の購入について
- リユースびんだからという理由で商品を買うことはないというのが正直なところ。リユースびんであるという以外のコンセプトやストーリー、別の魅力的な要素があればもっとリユースびんを手に取ってもらえるのではないか
- 缶やPETボトルなどと比較しても、びんは一番中身の味に影響を与えない容器。そのことが周知されればもっとびん入りの商品を選択してもらえるのではないか
○ リユースびんの排出(回収)について
- びんを排出するときは、行政の回収を利用している方が多い
- 古着や古本など違い、空きびんは回収している店が不明でどこに持っていけばいいのか分からないので、リユースがしにくいのでは
- コンビニで24時間365日回収してくれると利便性が高くて良い
- スーパーなど(びん入り商品を販売している店舗)で、月に2回ほど段ボールや洋服の回収を行っている。その際にびんも回収してもらうという方法はどうか
- 牛乳配達のように、郵便や宅配便もしくは新聞などの企業に家庭で出た空きびんを回収してもらってはどうか。家の前に箱を置いて空きびんをいつでも出せるようにしたら、PETボトルを排出するよりむしろ手軽になるのではないか。また、無傷のびんを回収するという可能性が見えてくるのではないか
- 小学生の頃にコーラの空きびんを酒屋さんに持っていくと10円で買い取ってもらえた。そういうことから実施していくのはどうか
- 以前、名古屋市では飲料水の空き缶(アルミ缶)を入れるとメダルがもらえる機械があって、子供の頃にたくさん空き缶を入れていた。そのように、回収に出すことに何らかのメリットがあればもっと回収が増えるのではないか
- びんを回収する際に現金で5円10円を貰えるという形ではなく、Tポイントや楽天ポイントのような共通ポイントを貰える制度を導入してはどうか。共通ポイントなら他のお店でも使えるし、現金と違って「リユースびんポイント」として記録が残るところが良い
- 最も多くのびんが集まるのは、行政の回収。その回収の仕事をこちら(民間)で請け負ってしまってはどうか
○ リユースびんの普及について
- リユースびんの場合、飲み口のところが欠けていたり汚れていたりしたら衛生面などで気になるが、びんに傷があること自体は悪いことではない。びんの傷を逆に楽しめたり、(何度もリユースされてきたことの)勲章のように思ってもらえるような方法を考えられないか
- リユースびんというのは傷があるけれども環境に良いということを一般市民の方に分ってもらえるようなPRをすることがリユースびんの促進に繋がる
- リユースびんを普及させるためには、どうブランド化をしていくかということが重要。消費者を巻き込むためには、環境やエシカルといったことよりも、リユースびんを使うとカッコいい、おしゃれだ、と誰もが思うようなブランド化ができると効果的
総括
NPO法人中部リサイクル運動市民の会 代表理事 永田 秀和 氏
「我々はリユースびんを普及するため、ここ10年くらい活動していますが、やはりいろいろな容器がある中で、よほどメリットがないとびんを選ぼうという人は増えていかない現状にあると感じています。例えば、法律である程度枠組みを作って、リユースびんを使わない企業にはペナルティを与えるぐらいのことをしていかないと、リユースびんを普及させるのは難しいのかなと個人的には思い始めている部分があります。ただ、現実的にそれは難しいということも分かっています。
だとすると何が大事かというと、こういう地道な活動を続けていくことが大事だと思います。様々なステークホルダー(関係者)が集まって、この地域の環境をどうしたらいいのかを話し合うということ。これしかできないですし、今後も様々なところでこういう場を設けて積み重ねていくことで、少しずつリユースびんのことが市民の方々に知れ渡って良い社会になっていくのかなと思います。
本日ご参加いただいたみなさまには、これを機会に、引き続きリユースびんの普及にご協力いただければと思います。よろしくお願いします。」
GREEN ROOM店長よりひと言
今回のワークショップに会場を提供されたGREEN ROOMの店長・中畑氏にもお話を伺いました。
「びんを砕いてリサイクルするという話は酒屋さんから聞いていたのですが、リユースびんのことは知りませんでした。安田さんからリユースびんのこと、もっと浸透させていきたいというお話を伺って、ぜひ応援したいということで一緒に取り組ませてもらっています。
『めぐる』『奏』もお店に置いていますが、商品のコンセプトやリユースびんであることについては、お客様にはなかなか浸透はしていないですね。日本酒が好きということで注文される方がいても、リユースびんだから注文されているのかといったらそうではないという状況です。
今回のワークショップについては、お話をいただいて、ぜひ参加したいということで協力させていただきました。リユースびん入りの商品を浸透させていくには、メーカーさんや酒屋さん、そして販売する飲食店との架け橋になるような繋がりを作っていかなければいけないのではないかと感じています。こういうイベントがあると、それぞれの立場からの意見も言いやすいと思います。」